小説「
ミーツ・ザ・ワールド[著]金田ひとみ」を読みました。生きにくさの原因ともいえるようなバイアス※について考えさせられる内容で、とても良かったです。身近な人に理解されないとか逆に身近な人を理解できないと感じている人は読むと楽になるんじゃないでしょうか。劣等感や自己否定感が強い人も心が軽くなると思います。
[バイアス]
偏見や思い込み、先入観からくる思考の偏りや認知の歪みを指す概念
※引用/google AI
あらすじを掻い摘んでいうと、アニメ好きの腐女子(すごい言葉ですよね)が、ひょんなことからキャバ嬢と出会い、それが殻を破るきっかけになって成長するという物語。
あらすじについては検索すればわかるでしょうからこのくらいにして、なぜ心が軽くなるのかに焦点をあてて、わたしなりの感想を書いてみます。
さて、本題です。
歌舞伎町が舞台ということもあり、朝方までお酒を飲みながらコミュニケーションを楽しむというようなシーンがわりと頻繁に出てきました。そういう一時的な快楽も悪くないですし楽しさがわからなくもないのですが、あまりに続くと健康にも美容にも差し障りがあるとか、一人の時間が無いと自分を保てなくなる等など、わたしとしてはそのような在り方が日常的な暮らしを好意的には受け止められませんでした(物語の中で楽しむ分には問題ありませんけどね)。
このような例一つとってもそうですが、価値観がすべて同じ人はいません。それを頭では理解していても身近な人に理解されない、あるいは身近な人を理解できないというのは、やはり辛いですし自己否定感や確執につながる場合もあるように思います。それが本来の資質や生き方に関わるものであるならなお更。
なぜ理解し合えないのかといえば、それは「人は皆違うから」なのですが、それだけではなく、バイアスがかかっているからということも多々あるように感じます。
バイアスは前述したように偏見や思い込みからくる先入観を意味し、思考の偏りや認知・認識の歪みを指す概念。親から子へ受け継がれたり、あるいは教育やメディアによって巧妙に刷り込まれたりもします。
ミーツ・ザ・ワールドはこのバイアスについて考えさせられる本でした。「その思い込みは本当にそうなの?」と何度も問いかけてきます。「そんな思い込み、ぶっ壊してしまえ」と言っているようにも感じました。勇ましい表現になってしまいましたが、そのようなテーマが根底に流れています。今の時代に必要なテーマだからこそ、このような物語が世に出てきたのかなぁなんてことも感じました。
今は時代の変わり目です。これまで当たり前とされてきたけれど、それってよく考えると本当に当たり前なのか、わたしたちを幸せにするどころか逆に自由を奪い窮屈にしているのではないか、みたいなことは多々あります。
それを冷静に見つめて、自分にとって必要ないと判断したならば潔く手放し、「わたしはわたし」と自分を貫く強さが求められていると思うのです。皆んなで新しい価値観を見つけていくという姿勢も大切かもしれない。
こんな風に直接的に書くと何やら説教臭くなってしまい、登場人物のアサヒ(ホスト)に言わせればダサイということになりそうですが、その点、小説は押しつけがましくなくて良いなぁと。
ミーツ・ザ・ワールドはそんなことを考えさせてくれる本でした。
[追記]
映画化が決定していることを知りました(2024年9月現在)。時代がこのようなテーマを求めているんでしょうね、きっと。
・画像はamazonより拝借